エピローグ ~村の灯りを未来へ

 

 

 「限界集落」と呼ばれ、中越大震災後には一時6世帯13人しか村人がいなかった池谷集落は、地域おこしの活動によって後継者が現れ、子どもが生まれ、「限界集落」から脱出することができました。

 この様子を見て、ある大学教授は「この集落は『奇跡の集落』だ」と賞賛しました。しかし、元からの村人の高齢化が進み、集落存続のためには課題が山積みです。

 2014年、池谷集落は新たな大事業に着手することにしました。新住民のための住宅(農山村就農研修施設)の建設です。集落の存続のためには、新たな後継者の登場は喫緊の課題です。ですが、集落には新たな住民が住める家がありません。冬期間に2〜3メートルの雪が積もる豪雪地帯ですので、離村した人のほとんどが集落に迷惑がかからないよう家を潰して行ったためです。唯一集落に残っていた空き家が、現在多田さん一家が住んでいる家です。移住してきた2人の女性は空き家がなかったため、池谷分校に住みました。しかし、池谷分校は人の出入りが激しいためプライバシーの確保が難しく、それが直接の原因ではありませんが、結果2人とも分校を離れました。やはり新住民のために新しいちゃんとした家が必要だと村人は考えるようになりました。

 2013年の冬頃から議論を重ね、建設費は予算1000万円(当初)とし、設計は十日町市の若手設計士グループ「studio-H5」のメンバーに頼むことにしました。建設地は池谷集会所の横です。当初別の場所を予定していましたが、登記上住宅を建設できないことが分かり、急遽この土地に変更しました。この土地には以前住宅が建っており、市外の方が購入し住んでいましたが、2003年に離村しました。住宅は数年前に解体されましたが土地はその方が保有していたため、集落会として土地を購入しました。

 

上棟式の様子(2014年8月24日)
「めぶき」上棟式の様子(2014年8月24日)

 

 建設費用は500万円を自前で捻出し、残り500万円は支援者に寄付を募りました。住宅には越後杉を利用し、新潟県の「越後木づかい事業」の助成金として約229万円を申請しています(助成は建設終了後)。

 しかし、当初想定していなかった土地取得費用や建築資材の高騰により予想以上に建設費用がかかることが判明したため、さらにクラウドファンディングサービス「Ready for?」を利用し、100万円の寄付を募ったところ、148万6千円をご寄付いただきました。2015年1月1日現在、合計約696万円の寄付が集まっています。池谷集落の存続が、ひいては日本全国の過疎地域の存続、また都市部の機能維持にもつながるとして、多くの方にご共感いただけたことを集落一同大変感謝しています。

 新たな住民が池谷集落で芽吹き、育っていってくれるよう願いをこめて、新規住宅は「めぶき」と名付けられました。建設は自分たちができる作業はなるべく自分たちで行い、またワークショップ形式で多くのボランティアの方にも手伝っていただきました。2014年7月から建設が始まり、8月24日に上棟式、11月には外装が完成しました。2015年冬の間に内装工事を行い、春には完成を予定しています。

 池谷集落の村人は、「めぶき」に住む人が将来の池谷集落の担い手となることを大いに期待しています。

 

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建設中の「めぶき」

 

 2015年1月現在、振り返ると2010年に行った「集落の5年後を考える会」で出たアイディアが、その後の5年間でいくつか実現することができました。

・分校の体育館を多目的ホールにする(2010年度に体育館を改修)。

・村全体を法人化(2012年度にNPO法人化し、村人のうち希望する人全員が理事になっています)。

・海外からも人が来る。

・米は全部直販(山清水米は個人販売と米屋などへの直接出荷のみで、一部付き合いで出している方以外は農協への出荷はしていません)。

・集落営農(2014年度から作業委託実施、農業参入完了したので2015年度からNPO法人名義で土地を正式に借りる予定)。

・加工品開発(加工所設立にはいたっていませんが、2014年度から委託加工で白がゆ・山菜ご飯の素、野菜がゆなどを商品化)。

・若い人の住宅(現在池谷集落内に建設中)。

 地域おこしの取り組みは一朝一夕でできるものではありません。何十年先を見据えて世代をつなぎつつ、集落を存続していく。これが昔から集落に住む人達の願いであります。

 

 最後になりましたが、紙面の都合上触れることが叶わなかった支援者、協力団体の皆様にお詫びと感謝を申し上げます。また、池谷・入山集落の地域おこし活動において志半ばでご逝去された関係者の皆様のご冥福をお祈りします。

 

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NPO法人十日町市地域おこし実行委員会集合写真。 2014年9月撮影。

 

参考資料:稲垣文彦ほか「震災復興が語る農山村再生」2014年。

     中越復興市民会議HP

 

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