第2章 集落存続に向けて、村が動いた

 

お米の直販の本格化

 

 「デザイン策定支援事業」でもう一つ重要なポイントは、実行にあたっての資金も復興基金から活用できたという点です。ここで策定した「復興デザイン計画」を実行に移すための「地域復興デザイン先導事業(以下、先導事業)」もセットになっていました。そして、この「先導事業」を活用して、お米の直販に関する取組みと、空き家改修の取組みが行われました。空き家改修に関しては第3章で詳しく書かせていただきますが、お米の直販に関しては以下の4つの取り組みが行われました。

 1)ミニ精米プラントの導入(予算487万8千円)

 2)独自ブランド構築のためのVI(ビジュアル・アイデンティティー)計画(予算55万8千円)

 3)米直販のための受注システムの構築(予算136万4千円)

 4)販路拡大のためのプロモーション事業(予算170万円)

 1のミニ精米プラントの導入では、精米から梱包まですべて自前でできるよう、改修した集会所の1階部分に精米機、石抜き機、色彩選別機、計量機、シーラー、保冷庫を設置しました。一連の作業が効率よく行われることになり、より多くの量を販売できるようになりました。

 2の独自ブランド構築では、池谷・入山集落のコシヒカリに「山清水米」というブランド名をつけ、ロゴを作り、米袋や段ボール箱のパッケージを統一しました。

 

精米所で精米作業をする村人
精米所で精米作業をする村人

 

 3の受注システム構築により、注文管理や伝票管理が簡素化されました。またインターネット上でも注文できるようになりました。

 4のプロモーション事業では全国各地で開催される各種イベントや催しへの参加や、お米を取り扱ってくれそうな飲食店や旅館などへの営業活動が行われました。このプロモーション活動では、外部から支援してくれるボランティアの方々がたくさん力をかしてくださいました。

 また、ホームページ「池谷・入山ガイド」を制作し、集落のファンを増やしてお米の顧客を増やす取組みも行いました。

 

イベントでPR活動を行う 曽根イミ子さん
イベントでPR活動を行う曽根イミ子さん

 

 「先導事業」がなければ、これらの取組みは池谷集落のような小さな高齢者ばかりの集落では、構想があったとしても資金的な問題で取り組むことはできなかったでしょう。

 復興基金の存在は、資金面において池谷・入山集落の地域おこしの取組みに無くてはならないものでした。震災をきっかけに外部から様々な人たちが関わって支援してくれたという事と合わせて、資金的な意味でも震災があったからこそ地域おこしの取組みができているのだと言えます。

 今まで記した以外にも、集落の庭野功さん(屋号:隠居)、曽根武さんと池谷出身で通い耕作者の庭野光郎さん(屋号:巾)の3軒で「池谷集落機械共同利用組合」として共同コンバインを導入するにあたっても復興基金が活用されました。

 中越大震災復興基金は、震災当時に新潟県知事が財務省と難しい交渉を行い非常に使い勝手の良い仕組みにさせたというものであり、こうした使い方ができる復興基金の仕組みは他の被災地の復興においても大いに参考になるはずです。

 

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