第3章 後継者現る!

 

ジェンからの自立

 

 2010年、地域おこし協力隊として多田さん一家が移住、また翌2011年に2名の女性が移住する予定が見えてきたころ、中越大震災以降池谷・入山集落を支援してきたジェンから突如「そろそろ自立してもらってもよいと思う」という連絡がありました。ジェンは「心のケアと自立の支援」をモットーとしており、最終的には支援がなくてもよい状態を作るという事をよしとしていますので、ジェンとしてはこの時点の池谷・入山集落は自立しても大丈夫だと判断したのでしょう。

 しかしながら、言われた村人たちとしては、「ジェンはもう自分たちを見捨ててしまうのか?」と驚きを隠せませんでした。そこで、ジェンの事務所と曽根武さん宅でインターネット電話をつなぎ、ジェン事務局長の木山さんから村人たちにも理解を得られるように話をしました。そして、これまでの支援する側・される側というのではなく、対等の立場で今後も関係は継続しましょうという話を受けて村人たちも安心することができました。

 自立後は、ジェンから引き継ぎ自分たちでイベントを企画し参加者を募集したり、山清水米のチラシをジェンのニュースレターに無償で封入してもらっていたものが有償になるなど、経済活動に関わってくる部分を自分たちで行っていくようになりました。ある意味、これまで外部からの支援を受けて行われていた地域おこしの取組みを、自分たちだけでも行えるようになったと認められたことは、新たなステージに立ったと言えるでしょう。

 そして、2010年11月26日、「自立式」が東京渋谷区にあるJICA東京講堂で行われました。池谷・入山集落からはマイクロバスをチャーターし、総勢18名が乗り込んで出かけました。十日町市の関口芳史市長からもご出席いただきました。

「自立式」では、ルポライターの筑波君枝さんの基調講演、映像紹介・展示物紹介と続き、池谷・入山からの「合わせおけさ」や十日町小唄の踊り等が披露されました。「合わせおけさ」で一番大きな拍手を貰ったのは、2日後に3歳になる多田家の長男、和正くんでした。

 その後、パネルディスカッション「コミュニティの再生:今、日本の中山間地が元気を取り戻す~池谷・入山の努力と目標~」と題して行われました。

 最後に、この年の集落長の庭野功さんにジェンより池谷・入山集落の旗が手渡されました。旗に描かれたロゴは、ジェンが支援企業に依頼して作ってもらったものです。池谷・入山集落の頭文字をとって「i」が2つ並び、人が手を取り合っているようにも、笑顔のようにも見えます。池谷・入山集落の自立を祝い、今後の発展を激励する素敵なプレゼントでした。

 

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ジェンからロゴの旗を渡された庭野功さん

 

新しい旗のプレゼントに対して、功さんから答辞がありました。

答辞の内容は以下の通りです。

 

お礼の言葉

 稲の刈り入れを終え、冬の大雪に向けた支度が、ほぼ一段落した今日この良き日に、お陰様をもちまして、「自立式」という大きな節目を迎えることができました。

 2004年10月23日に起こった中越大震災は、私たちに多くの被害と困難をもたらしました。 今まで経験したことのない大きな震災によって、家も作業所も大きく壊れ、村の道路はいたるところがひび割れ、神社の鳥居も崩れました。また山は滑り落ち、痛々しい白い肌を見せ、田んぼの畦は崩れ、震災後3年もの間、コメ作りが出来ない農家もありました。

 しかし今振り返ってみると、この震災は、甚大な被害をもたらす一方で、より多くの“恵み”を私たちに与えてくれました。未曾有の大震災に見舞われて、そこから立ち直るための復興活動を、ジェンの皆様、そして遠方より駆け付けてくださった、1000人を超えるボランティアの皆様のお力を借りながら、この6年間続けてくることができました。

 多くのご支援の皆さんとの協働作業により、村の中の景色が目に見えて変わってきたことはもちろんのことです。そして協働作業を通じて、住民同士がお互いに顔を合わせる機会が増え、またこれまではほとんどなかった外から来られた方と住民とが触れ合う機会が増え、助け合う気持ちが今まで以上に増し、地域全体の雰囲気もとても良い方向に変わっていきました。

 そしてもうひとつ。廃校になっていた旧池谷分校が「やまのまなびや」として生まれ変わり、こんなにも沢山の人が訪れるようになるとは、震災直後、誰が想像できたでしょうか? 池谷・入山が今、こんなにも活気ある地域に生まれ変わったのもジェンの皆さまの情熱とご尽力があったからだと、住民をはじめ関係者一同、感謝の念でいっぱいであります。

「もう10年早く大震災が来てくれれば良かった」という話も冗談ばかりではありません。集落の存続も希望が見えてきました。

 言葉ではとても言い尽くせるものではありませんが、この6年間本当にありがとうございました。

 本日の「自立式」によりまして、ジェンの皆さまと私共の関係は、いままでの支援する側と、される側という関係から、一歩発展させた、相互協力という新しい関係に変わります。地区住民の高齢化、農業の後継者不足など依然として課題は多くありますが、住民一同がこれまで以上に力を合わせて、繋がりの出来た多くの方とのご縁を忘れることなく、共に一生懸命精進して参る決意であります。

 最後になりましたが、ジェンの皆さま、これまでご支援して下さった数多くのボランティアの皆様、そして十日町市地域おこし実行委員会、お互いの今後のますますの発展を祈念いたしまして、結びの言葉とさせていただきます。 本日は誠にありがとうございました。

 2010年11月26日 十日町市池谷・入山集落

 

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十日町市長、村人らと記念撮影

 

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