第4章 集落の灯を絶やさない

 

NPO法人化

 

 2011年は田んぼの事を考えると厳しい年でしたが、一方で十日町市地域おこし実行委員会の法人化に向けて前進した年でもありました。「農村六起ビジネスプランコンペ」に、実行委員会のNPO法人化を題材として多田さんが応募したのです。「農村六起」とは認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが内閣府の事業として運営する、農村での六次産業化の起業支援事業でした。コンペで審査に通ると起業支援金として200万円を得ることができます。(平成23年度で事業終了)。

 2011年1月30日に長岡会場でコンペが行われました。書類審査を無事通過し、最終発表まで勝ち残りましたが、残念ながら選考には至りませんでした。

 審査員の方からはこのようなコメントをいただきました。

・今回200万円ばかりもらわなくても、既に自立してできるのではないか。

・何を食いネタとするのかをはっきりさせた方がよい。

・(発表で)NPO法人の職員はNPOからの給与と個人の副業で生計を立てるという風にあったが、副業の選択肢を具体的に示した方がよい。

 最後まで多田さんのプランを選考するかどうかもめたという事で、全く芽がないわけでもないようでした。

 審査員の中には、

「そのつもりがあれば自分が200万円を出してもよい。自分が考えている事と共通するところがあるので、選ばれなくてもやってしまったらいい。」

 とまでおっしゃって下さる方もいました。

 後日、集落内で話をし、農村六起に再チャレンジをする事になりました。

 再チャレンジする理由としては、

・あと少しで選ばれる可能性があるのであれば、このまま引き下がるのは悔しい。

・様々な費用面で200万円というのは長い目でみたら小さい金額かもしれないが、今の時点ではやはり大きい。

・農村六起のような取組みに選ばれる事は、こういった小さな集落としては非常に名誉な事である。

 ということでした。

 次は、2011年9月3日の長野会場に向けて準備が行われました。再挑戦では前回の反省も踏まえ、計画を練りなおし内容を向上させた上に、発表でも最大限アピールできるようにするために多田さんだけではなく、実行委員会代表の山本さんと集落の曽根武さんも一部発表に加わるなど集落一丸となって臨みました。結果、無事選考を通過する事が出来ました。

 審査員でもあり、ふるさと回帰支援センターの専務理事・事務局長(当時)の高橋公氏からは

「前回はダメだったが、今回のプレゼンはこれまで200以上のプレゼンの中でも10本の指に入るぐらい完成度が高いプレゼンでした。」

 との評価を頂き、非常に達成感が得られました。

 

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「農村六起ビジネスプランコンペ」で発表をする多田事務局長

 

 無事、起業支援金を活用出来る事になり、実行委員会のNPO法人化の準備が始まりました。2011年12月10日にNPO法人の設立総会が開催され、2012年4月4日に登記が完了、晴れて十日町市地域おこし実行委員会はNPO法人となりました。

 NPO法人には大きく分けて2種類あります。1つは完全にボランティアのみで運営されており、有給スタッフがいないパターン。もう1つは有給スタッフを雇用して普通の会社のように運営されているパターンです。

 NPO法人化する前の実行委員会は、山本さんや今村さんなどが完全にボランティアで運営していました。籾山さんが来てからは、平日の昼間でもみっちり時間を使える関わり方ができるようになってきました。しかし、籾山さんはあくまでも農業研修生という事で実行委員会から給料は支払われていませんでした。多田さんも地域おこし協力隊の任期中は、協力隊として担当地域の取組み支援という形で関わっており、実行委員会からは給料を支払っていませんでした。

 NPO法人化後は人を雇用する方針を明確にし、経営が軌道に乗るまでは、様々な助成金などもうまく活用して組織を運営しているのが現状です。後継者を受け入れられる環境とするには、住居と合わせて仕事・収入を作っていく必要がありますので、今もなお手探り状態ながら何とか雇用を増やしていくことができるように取り組んでいます。多田さんの奥さんの美紀さんはお米の直販事務に対する対価として、佐藤さんは池谷分校管理人の手当として、福島さんはイベントや広報の事務の手当としてそれぞれ月5万円が支払われていましたが、これは毎日終日仕事があるわけではなく、正規に雇用するという仕組みではありませんでした。

 NPO法人化後は人を雇用する方針を明確にし、経営が軌道に乗るまでは、様々な助成金などもうまく活用して組織を運営しているのが現状です。後継者を受け入れられる環境とするには、住居と合わせて仕事・収入を作っていく必要がありますので、今もなお手探り状態ながら何とか雇用を増やしていくことができるように取り組んでいます。

 

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